AIによる「バカ化」を防ぐには
AIに頼ると自分の頭で考えないようになる――。確かに理屈としては分かるが、とはいえ便利なAI系ツールに頼らず生きていくというのも難しい。特に現代のビジネスパーソンにとっては、AIをいかに使いこなせるかで、仕事の効率や成果が大きく変わってくる。
それでは、AIを使いつつ、自らの批判的思考能力も維持するにはどうすればよいのだろうか。
先ほどの研究結果を基に、ヒントを探ってみよう。
前述の通り、研究者らはアンケート結果から、若年層でAIツールへの依存度が高く、またそれと相関する形で批判的思考能力も低くなる傾向が見られたと述べている。
その上で若年層にインタビューしたところ、参加者たちからは「AIツールを使えば、わざわざ考えなくても答えが得られるから便利だ」や「AIがいつも正しい答えを教えてくれると思っている」などのコメントが得られたそうだ。
また、「教育レベルが高いほど批判的思考能力が高く維持される」という点についても、インタビューを通じ、高学歴者たちから「AIツールが出した情報を鵜呑みにせず、必ず別の情報源と照らし合わせて確認する」といったコメントが得られたという。
高い教育を受けた人々は、その教育を通じて、批判的に情報を見るトレーニングを積み重ねてきた。その結果、AIの出力に対しても、それを批判的に評価する姿勢を維持できているのではないかと研究者らは分析している。
若年層はまだ人生経験を積んでおらず、教育についてもまだ受けている途中だ。したがって、他の年齢層に比べて批判的思考や「自分の頭で考える」訓練を(まだ)受けていない人々が多い。
一方で高い教育レベルを持つ人々は、それだけ人生経験も積んでおり、AI出力のバイアスや限界を認識し、自身で評価・分析する傾向が高いというわけである。