司法機関にも政治的対立の様相

 司法機関も政治的対立とは無縁ではない。公捜処は2021年にできた文在寅政権の置き土産である。革新系の政治家が検察から痛い目にあわされたとの思いを背景に検察の権限を削ぐためにできた組織である。警察もかつては検察の下部に置かれてきた。

 現在はその公捜処と警察が中心となって捜査を進めている。

 裁判所もソウル中央地裁より西部地裁が革新系に有利な判決を出すため、今回、西部地裁にも持ち込んだというのが保守系の人々の見方である。いずれにせよ、ここにも政治的対立の匂いがする。

 公捜処と警察は、大統領警護処の朴鍾俊(パク・ジョンジュン)処長に尹大統領の拘束妨害で出頭を求めた。朴処長は10日に警護処長を辞任して出頭したが、同氏は警察の出身であり、大統領に対する拘束令状には反対しながらも火器使用を禁止して物理的衝突を避けようとする穏健派である。

 しかし、その後処長代行となった、キム・ソンフン次長は「大統領の警護業務で席を外すことができない」として出頭には応じていない。同氏は警護処の叩き上げで、戒厳令に関与した金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相(彼も元警護処長である)の盟友であり、大統領への忠誠心が高い。このため、警護当局と司法機関との物理的衝突の危険が高まっているとの見方がある。

 公捜処と警察は7日、大統領拘束令状の再交付を受け、大統領拘束のためどのような手段に出るか検討中であるという。尹大統領の弁護団は司法機関側が拘束令状執行のため機動隊や装甲車、ヘリコプターを動員しようとしていると懸念している。