ヒトも乾眠できるのか

「サイズの問題があるから無理でしょう。クマムシは水滴よりも小さくて、細胞数は1000個ぐらいです。だから30分程度で乾燥できる。けれどもヒトの場合は37兆個も細胞があるので、そうは簡単にいかない。仮に外側を乾燥できたとしても、体の内側が湿っていたら乾眠とはなりません。その間に水分が失われていけば、組織はどんどん壊れていく。だから体積が表面積に対して十分に小さな生き物でないと乾眠は成立しないと思います」
 
 結局、クリプトビオシス、すなわち代謝を止めて生命活動を停止する状態に入れる生き物は、ごく小さな生き物に限られるようだ。

 乾眠状態で酸化さえ防げば、おそらくは相当な年月乾いた状態を保てる、つまり死なない。死んでいないから、水をかければ瞬時に生きている状態に戻れる。

 生きている間は代謝を続ける普通の動物とは大きく異なり、クマムシにとって乾眠とは、代謝こそ止まっているものの決して死を意味するものではない。だからといって、それこそ生き生きと活動しているわけでもない。

 そんなクリプトビオシスとは、一体何なのか。