生でも死でもない「クリプトビオシス」とは
動物が一時的に活動を止める現象なら、ほかにも冬眠がある。けれども冬眠と乾眠には決定的な違いがある。
「冬眠は乾眠とは違って、代謝は止まっていません。ただ動きが緩慢になっているだけです」

だとすれば、クマムシもまず冬眠する能力を持つようになり、その後、乾眠へと移行していったのだろうか。この疑問に対して荒川氏は「おそらく違う、クマムシは最初から乾眠能力を得たのだ思います」と答える。では、どうやって乾眠できるようになったのか。
「カンブリア紀に陸地へと生物が進出し始めたとき、植物に続いて節足動物などが陸上に進出していったはずです。その時点でクマムシの先祖も陸地に出ていった。けれども体が小さいから、波打ち際から陸地へとは簡単にたどり着けなかった。そのため濡れたり乾いたりを繰り返す。体内の水分量が大きく変化する中で、乾燥したときにも体の構造を維持できるメカニズムを獲得できたのでしょう。もちろん、確かめようがないのであくまでも仮説ですが」
仮にクマムシの乾眠メカニズムが遺伝子レベルで完全に解明されれば、それを応用してヒトも乾眠できるようになるのだろうか。