なぜ、若者は上司の叱責ですぐにメンタルを崩すのか

【理由① 回避志向】

 1つ目の理由は、若手特有の「回避志向」がもたらす上司・部下間のジェネレーションギャップだ。

 調査では、若年層ほど人目を気にし、仕事での失敗を恐れる傾向が強く、上司からの叱責でストレスを感じやすいことがわかった。このようなことは、近年の若者の特徴として繰り返し指摘されてきた*2

「最近の若者は叱るとすぐにメンタルを崩す」という言説は、Z世代論として枚挙にいとまがない。調査の結果、これが統計的にも確かめられたことになる。

 背景には、競争よりも多様性と調和が重視されるようになった学校教育の変化に加え、SNSが普及し人目を気にする機会が増えたこと、インターネットの普及によって自力で試行錯誤するよりも、すでにある情報をいかにうまく活用するかが重視されるようになったことがある。

 実際に、このような環境で育った若手ほど、他者からの批判や失敗のリスクを避けようとする「回避志向」が強い。

 しかし、社会人になると、自分たちとは異なる価値観をもつ世代が上司となり、お互いに様々な違和感を抱くことになる。その表れの1つが、回避志向が強い若手が上司からきつく叱られると、メンタルヘルスに不調をきたしやすいという事実だ。

 怒りのこもった指導は、若手が避けたい他者からの批判であり失敗の追及だが、過去の経験から「叱ることが指導」と考える上司もいまだに多い。上司としては成長への期待を込めていても、叱られた経験が少ない若手にはその意図がわからず、自分への批判や攻撃とみなし精神的に疲弊するのである。

出所:パーソル総合研究所「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」より筆者作成
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 加えて、若手は上の年代と比べ、将来のキャリアや生活への不安を抱えているというジェネレーションギャップもある。実際、メンタルヘルス不調になった20代男性の2割は、原因として将来不安をあげた。

 社会保障費などの金銭的負担が年々増し、終身雇用も崩壊したと言われる。こうした中、将来不安という重荷が若手のストレス耐性を低下させている側面もあるだろう。