USスチールはなぜ今、売却するのか?

 そうした中で、対日政策では米政権交代をまたいで表面化しているのが日本製鉄によるUSスチール買収問題だ。

 任期終了直前の「レイムダック」、ジョー・バイデン大統領は1月3日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を中止するよう命じた。

 製造業を支える鉄鋼メーカーが外国企業に買収されれば、安全保障上のリスクが生じると判断したためだ。

 原則として30日以内に買収計画を「完全かつ永久に放棄」する措置を講じるよう求めた。

 軍事面では米軍・自衛隊の一体化を推進してきたバイデン氏の「お言葉」とは思えない。

Statement from President Joe Biden | The White House

Order Regarding the Proposed Acquisition of United States Steel Corporation by Nippon Steel Corporation | The White House

 トランプ氏も12月上旬、自らが運営するSNS(ネット交流サービス)に「私が大統領として、買収取引を阻止する」と投稿し、買収に反対する考えを明言していた。

 トランプ氏は、バイデン氏の決定を受けて、1月6日にはSNSにこう投稿した。

「関税によってUSスチールの収益力と企業価値がはるかに高まるという今、なぜUSスチールを売却したがるのか?」

「かつて世界で最も偉大な企業だったUSスチールが、再び偉大な企業になることができたらいいと思わないか?」

「すべては(日本製鉄をはじめとする外国企業に高い関税を課すことで)即座に実現する!」

 トランプ政権が保護主義的な関税引き上げをすれば、USスチールは単独で再建できるとの考えのようだが、それでもUSスチールが立ち直れないと分かった時はどうするのか。