6.第4段階:ドネツク州全域の完全制圧へ

 第4段階(現段階)は、2024年5月から同年12月までの期間である。

 ロシア軍は、ウクライナのルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州で攻勢し、主力はドネツク州全域を占領するように主に2つの方向から攻撃するという構想を立案し、実行している。

 この攻撃は、ドニプロ川の線まで突進するものではなく、ドネツク州の境界線までを占拠する程度の攻撃衝力でしかない。

 この間、ロシアはウクライナ軍にロシア国境での配備の弱点を突かれクルスク州に進攻された。

 そして、ロシア軍はこのクルスク州の奪還を目指しているが、3か月が経過しているものの奪還できてはいない。

図4 ドネツク州全域を制圧する攻撃構想(推測)

出典:米戦争研究所(2024年1月5日)の地図に筆者が書き加えたもの

 これまで攻撃していなかったハルキウ付近の国境から攻撃を開始するとともに、ロシア軍の主力をドネツク正面に集中して攻撃を継続した。

 一方向からの攻撃は進み、ドネツクの境界まで接近しつつある。

 だが、ドネツク正面の他の方向からの攻撃は進展せず、ドネツク境界までの到達を短期間に達成することは、これまでの戦況の推移から見て極めて難しい。

図5 ロシア軍のドネツク州とルハンシク州での戦果(2024年8月と2025年1月の比較)

出典:米戦争研究所2024年8月23日と2024年1月6日の戦況地図に、筆者がコメントを加筆

 2024年10月初め、ウクライナ軍はロシアの国境を突破して、クルスク州に進攻した。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、早期に奪還すると発言していたが、奪還期間は次々と先延ばしになり、現段階では1月20日までと言うのだが、達成の可能性はほとんどない。

 早くても今後数か月以内には、奪還できないであろう。

 この段階の攻撃構想は、最も狭い範囲に設定されているようだ。

 現段階では、ロシア軍はドネツク州の境界までが精一杯で、今後の戦果の拡張を考慮に入れても、ウクライナに兵器・弾薬の供給が行われればドニプロ川まで行ける可能性はない。

 そして、この期間の損失は、1か月間で3.5万~4.7万人である。

 2024年5~12月までで、32万人の損失を出している。1から4段階までを比較した場合、最も多いレベルである。