2.奇妙でちぐはぐな攻撃の実態

 ロシア軍の軍事目標やその構想は当初は大きかったが、現在は小さく局地的なものになっている。

 軍事目標と損失の関係を見ると、一般的に考えて目標や構想が大きければ損失は大きくなり、小さくなれば損失も小さくなる場合が多い。

 ところが、ロシアはウクライナの全域を攻撃しているときに損失が最も小さく、現段階でドンバスの狭い範囲を攻撃している時に最大の損失を出しているのである。

 ロシア軍の実態は一般の状況とは逆の状態であり、あまりにも極端だ。

 このことから、ロシア軍の現段階での攻勢は、費用対効果が逆転している奇妙な攻撃なのである。

 このロシア軍の攻撃の実態を解明するために、約3年間の戦いを参考にして、まずロシア軍の目標と攻撃構想を侵攻当初から現在まで、特徴がある4つの段階に区分する。

 そして、それらがどのように変化してきたのか、またそれぞれの段階での損失の増減との関連について分析する。

 その結果、ロシア軍のこの奇妙な作戦の実態と、ロシアが受けている痛み、どれほど無駄な戦いを実行しているのかを明らかにしたい。