7.現段階:最大規模の損失で攻撃衝力が減少
現段階(第4段階)では、最も狭い範囲(図4参照)内での作戦目標への攻撃にもかかわらず、最大の損失を出している。
たとえこの地域を突破できたとしても、最大でドネツク州の境界までが到達可能範囲だ。
この場合、ウクライナ軍が次から次へと防御陣地を構築していることや現状の戦況の推移から、ロシア軍は大きな突破の成果を得られずに、多大な損失を出し続けることになる。
つまり、このままの戦い方を実施していくと大きな戦果はなく、1か月に3.5万~5万人の損失が、12か月間実施すれば、40万~60万人の損失が出るということだ。
このことは、プーチン政権内部も不合理で無謀だと考えるだろう。
少なくとも第2段階や第3段階での作戦目標や構想が達成できるのであれば、犠牲が出ても耐えられるだろうが、小さな成果でこのまま戦い続けるのは、誰が見ても合理的でないことが分かる。
8.最小の目標達成努力は痛みと無駄だらけ
ロシアがこれから達成できる可能性があるのは、ドネツク州の境界まで進出することである。
現在の段階でのロシア地上軍の攻勢は、軍事的合理性に問題がある(最大の損失で最小の利益)。
ロシア国防相は2024年の12月16日、「ロシア軍は2024年だけで4500平方キロ(京都府の大きさに匹敵、図5の○の部分)の地積を制圧した。そして、2025年には特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)で勝利を確実にする」と主張した。
その制圧地積は正しいだろうが、一方で10月にはウクライナ軍にクルスク進攻を受けまだ奪還できていない。
しかも、2024年1年間で兵士43万人の死傷者を出している。
ロシア国内を見れば、国内の石油関連インフラや軍事産業施設がウクライナの無人機や巡航ミサイルによる攻撃を受け破壊され、国内の経済活動と国民生活(暖房・電気)に重大な影響が出ている。
しかも、米欧日からの経済・金融制裁も受け続けている。
軍事作戦目標の観点からは、大きな作戦目標を達成しようとしたときに、少ない損失であったにもかかわらず、軍事作戦上の問題から目標達成を途中であきらめた。
現段階では、ロシアという巨大な国家が、最も小さい軍事目標達成のために多大な損失を出している。この努力は無意味である。
現在の戦争を継続すると、ロシア国内の痛みはますます大きくなっていく。
そして、戦争継続の意味は薄まり、ロシア政権内部に不満が高まることになる。