5.第3段階:北部・東部に戦力集中、攻勢範囲も限定

 第3段階は、2023年の1月から5月までと、同年の10月から2024年の4月までである。

 ロシア軍は、ウクライナ軍の北部・東部の拠点陣地(要塞)を突破して占拠し、その後、ウクライナ軍の混乱に乗じてハルキウやドニプロ川まで突進する構想を立案していたのであろう。

 ロシア軍は、この構想を実現させるために、「肉挽き攻撃」と呼ばれるほどの兵士の犠牲を厭わない攻撃を続行した。

 現に、大きな犠牲を払って拠点陣地を突破して占拠するという成功を果たしたのである。

 このとき、ロシア軍のバフムト攻撃とアウディウカ攻撃の間に、ウクライナ軍の反転攻勢があった。

図3 北部・東部に攻撃範囲を限定する攻撃構想(推測)

出典:米戦争研究所(2023年1月2日)の地図に筆者が書き加えたもの

 ロシア軍は、バフムト攻撃とウクライナの反転攻勢を挟んで、アウディウカの拠点陣地に「肉挽き攻撃」と呼ばれる攻撃を行い、人海戦術で次から次への波状攻撃を行った。

 反転攻勢を受けて防勢作戦を行った時は、損失が比較的少なかった。

 だが、肉挽き攻撃を実施した時には、1か月間に2.3万~3万人の損失を出した。

 現段階よりも少ない損失だが、第1・2段階よりもはるかに多い。

 とはいえ、ロシア軍兵士の犠牲によりバフムトやアウディウカの要衝を占拠することができた。

 この時期、ロシア軍はこの勢いでウクライナ軍の防御陣地を突破して、引き続き戦果拡張を行い、ドニプロ川まで突き進む攻撃構想を持った可能性がある。

 だが、約20万人という大きな損失を出したものの、結果的にドニプロ川どころかドネツク州の境界までも進出することはできなかった。