3.第1段階:ウクライナ全域占領案

 第1段階は、侵攻当初、ロシアと接するウクライナ全域に対しての攻勢で、戦線を縮小するまでの1か月の期間である。

 ロシア軍は侵攻当初、ウクライナと接するすべての地域から攻勢をかけ、ウクライナ全域を占領しようとする軍事目標と攻撃構想を立案していたと考えられる。

 このためロシア軍は、キーウ正面は空挺・ヘリボーン作戦を併用してキーウを北と東側から包囲するように攻撃。

 北部正面はハルキウを占拠する攻撃、東部正面はドネツクとルハンシク州全域を占拠する攻撃。

 南部はザポリージャ州とヘルソン州を占拠する攻撃、オデーサを占拠して黒海に面する南部の港を占拠するための攻撃をした。

 その後、首都キーウ、ドニプロ川東部域、港湾都市オデーサを占領したのち、ウクライナの西部国境まで進撃する計画があったものと考える。

 このロシアの案は、100%目標達成した場合である。

 ロシア軍のこの構想の背景には、①ロシア軍が大きな損失を受けずに2014年クリミア半島やドンバス地域の占拠を達成できたこと、②その後、ウクライナの防御準備が十分にできていないという判断があったのだろう。

図1 ウクライナ全域の占領のための攻撃構想(推測)

出典:米戦争研究所(2022年2月24日)の地図に筆者が書き入れたもの

 ロシア軍兵の損失は、約1.5万人であった。

 ウクライナとロシアの国境線のすべてから広範囲に攻撃したことから、大きな損失が出ても不思議ではない。

 だが、意外にもその損失は現在の戦闘結果と比べ最も少なかった。