もう一つのリスクシナリオ「プラザ合意2.0」
日銀の利上げが上半期中に止まり、ECB(欧州中央銀行)やBOE(イングランド銀行)が年間を通じて利下げを持続し、スイス中銀に至ってはマイナス金利への回帰も視野に入る中、FRBは「利下げの終わり」はおろか「利上げの始まり」すら争点化しそうな雰囲気がある。
主要国の政策金利を俯瞰してみれば、為替市場におけるドル独歩高が必然とも言える状況が定着する可能性もある(図表③)。
【図表③】
問題はその程度であろう。2025年のFRB利下げに関して、1~2回と読むのか、ゼロ回と読むのか、それとも利上げ織り込みの進展まで読むのかでドル高の震度は変わってくるが、ドル高地合いという意味では変わらない。
特に日本にとっては、2025年半ば以降は「円全面安でありドル全面高でもある」という強弱関係が予想され、それゆえに160円台定着はリスクシナリオとは言えない。
問題は低金利やドル安を志向する第二次トランプ政権がそうしたドル全面高をどれほど許容するのか、だ。
達観すれば、ドル高相場自体はかれこれ10年以上も続いている。その傍らで積み上がる貿易収支赤字がトランプ支持者の土壌を作ったとの見方もある。「プラザ合意2.0」の可能性を念頭に置くリスクシナリオに関しては、別の機会に議論したいと思う。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年1月6日時点の分析です
唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。