クルマの「スマホ化」に危機感

 24年12月23日には日産とホンダが経営統合交渉に入ることを発表した。この統合スキームに三菱自動車も加わることを検討しており、「3社連合」ができれば、「非トヨタグループ」の自動車連合ができる。

経営統合協議に関する記者会見する日産の内田社長、ホンダの三部社長、三菱自動車の加藤社長(左から)(写真:ロイター/アフロ)

 一方で、スズキに加えて、同じくトヨタが出資するマツダやいすゞ、すでに持ち分法適用会社となっているSUBARUを含めて「広義のトヨタグループ」ができている。トヨタのスズキへの出資比率が高まれば、「広義のトヨタグループ」の結束もさらに高まるだろう。

 25年はトヨタとスズキの関係が深まることを筆者は予想するが、同時にトヨタ自身も「変身の年」だと見ている。

 コロナ禍にあっても安定した業績を出し、経営基盤は今のところ盤石だが、自動車の「スマートフォン化」に代表されるような産業界の大きな変化についてトヨタは危機感を抱いている。時代の流れに合わせてトヨタ自身が大きく組織を変えてくるのではないか。

 トヨタは持ち株会社への移行や、グループ企業の再編などを検討していると見られる。25年は、日本の自動車産業で、生き残りをかけたダイナミックな動きが見られるに違いない。

井上 久男(いのうえ・ひさお)ジャーナリスト
1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略!サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。