インフレ懸念再燃で米国株は大幅な調整か

 FRBは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決めたものの、パウエル議長は記者会見で「利下げを急がない」といった趣旨の発言をしました。4回程度と見込まれていた2025年の利下げの回数は2回程度、場合によっては打ち止めかという見方が出てきています。

 背景の1つは、想定以上の米国経済の底堅さです。堅調な個人消費を背景に、7〜9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は上方修正されました。

トランプ氏(左)とFRBのパウエル議長(右)=2017年撮影(写真:ロイター=共同通信社)

 しかし、それ以上に今後、影響が大きくなると見られているのが、トランプ政権の政策です。減税による財政拡張や輸入関税の強化、それにや不法移民の強制送還など、インフレ圧力を強める政策が目白押しです。すでに、長期金利は上昇傾向にあり、債券市場は完全にインフレにフォーカスしています。

 インフレ懸念が再燃すれば景気の足かせになります。トランプ氏が大統領選で勝利した後、規制緩和などを期待して関連銘柄の株価が急上昇する「トランプラリー」が起きて米国株高を牽引しましたが、すでにその熱狂ムードも過ぎ去っています。12月にダウ工業株平均が50年ぶりとなる10日連続で値下がりしたのは、その表れでしょう。

 こうしたトランプ2.0の不確実性により、2025年は歴史的な高値水準にある米国株の大幅な調整は避けられないと考えています。米国株は世界の株式時価総額の半分以上を占めているため、米国株の調整が波及し世界同時株安を招く可能性もあります。

 そうした状況の中、日本はどうなるでしょうか。

>>(後編に続く)【2025年NISA戦略】世界同時株安が起きても日本株は「買い」の理由、焦点は日銀の利上げと円高シフト

※投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。

中野 晴啓(なかの・はるひろ) なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任し、 2023年6月に退任。9月1日、なかのアセットマネジメント設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。近著に『新NISAはこの9本から選びなさい』『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(写真:村田和聡)