地元住民を「割引」で優遇

 二重価格と言っても「日本人と外国人」ではなく、京都市営バスのように「地元住民とその他」で価格差を付ける動きも少しずつ広がっているようです。

 自然豊かな観光地を多数抱える北海道では近年、ホテルやスキー場などの利用価格が外国人を当て込んで高騰し、一般道民が気軽に利用できなくなってきたとされています。このため、北海道観光機構は宿泊・旅行業界に向けて道内客向けの割安価格を設定するよう呼びかけを始めました。道民割引という二重価格の設定です。予約時に道民であることを告げ、チェックイン時などに身分証明書を提示する仕組みです。

 日本はいま、観光立国推進基本法に基づいて2023年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」(3カ年)のさなかにあります。円安に加え、政策面でも外国人観光客の増加に向けた取り組みを続けており、訪日客のさらなる増加は避けられません。そんななか、北海道のように地元住民を優遇する二重価格も市民権を得ていくのかもしれません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。