尹政権、崩壊へ自滅か
今年4月の国会議員選挙で与党・国民の力は大敗した。それ以降、尹大統領の政権運営は暗礁に乗り上げている。
これまで多数の政府官僚に対して弾劾訴追が発議されており、検事やその他政府の重要ポストにいる人物も弾劾の標的となっている。予算案も可決できない事態に陥っており、尹大統領は戒厳令宣布の会見で、正当な国家機関を混乱させていると野党側を非難した。
尹政権の支持率は20%前後と低水準で推移している。背景には、韓国経済の停滞がある。先月末には2024年と25年の経済成長率の見通しがともに下方修正されたばかりだ。停滞する経済への国民の不満を背景に、野党側は尹政権批判を激化させてきた。追い詰められた尹大統領は暴走したのか。
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こうした状況のなか、尹大統領が野党による政府批判が国家運営を混乱させているという「大義名分」を挙げたとしても、そもそも尹大統領への不満がくすぶる状況で国民が今回の戒厳令に納得するとは思えない。
私も戒厳令宣布の一報を確認したとき、「こんなことをして政権はもつのか」という思いが真っ先に脳裏をよぎった。実際、帰宅の途中、「李在明が大統領になればいいじゃないか」という声がそこかしこから聞こえてきた。
共に民主党をはじめとする野党は、尹大統領が辞任しなければ「軍隊動員の内乱罪」を根拠に大統領に対する弾劾を早期に実現すると息巻いている。弾劾投票によって民意を問うには、国会で3分の2を超える賛成が必要となる。現在の国会は、総議席数300のうち野党勢力は192に留まっている。3分の2に、あと一歩足りない。
今回、戒厳令の解除要求には与党・国民の力も含め、国会に集まったすべての議員が賛成している。戒厳令の宣布を批判した国民の力の韓東勲代表は、弾劾を求める動きにどう対応するのか。それによって尹政権の運命が大きく変わってくる。
平井 敏晴(ひらい・としはる)
1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。