慶応義塾大学で行われたテッド・ネルソン氏の基調講演(筆者撮影)

 現代のデジタル社会を形作る原点はどこにあるのでしょうか。

 私たちが日々使うウエブサイト、情報共有、そしてAI技術の背後には、半世紀以上前に描かれた一人の科学者のビジョンが存在します。

 その科学者こそが、ハイパーテキストの父と呼ばれるテッド・ネルソン(87)氏です。

 1960年代、ネルソン氏が着手した「Xanadu」プロジェクトは、双方向リンクや知的財産管理といった、現在のインターネットの基盤となる革新的なアイデアを提示しました。

 その後も、彼のアイデアはティム・バーナーズ=リーらによるワールド・ワイド・ウエブ(WWW)の発明や、デジタル民主主義の拡がりに大きな影響を与えてきました。

 そのネルソン氏が11月28日、慶應義塾大学サイバー文明研究センターが主催する特別シンポジウムで講演しました。

 今回は、その講演を通じて彼の思想がどのように受け継がれ、また、現代のインターネット社会において新たな意義を持つのかを探ります。

 デジタル時代の「原点」に立ち返りながら、未来への可能性を考えるひとときとになれば幸いです。

 この講演はすべて通訳なしで英語で行われました。以下は、筆者の翻訳です。