2番目に朝ドラを観ている人が多い50代以上の男性(M3層)視聴者も減った。『虎に翼』は13%前後が観ていたが、『おむすび』は11%前後である。
40代以下の個人視聴率も落ちた。40代以下は仕事や子育てなどで忙しいため、最初から朝ドラをあまり観ていないが、それでも視聴率全体への影響は避けられない。評判にも関わる。
20~34歳の女性(F1層)は『虎に翼』を全体の1.5%強が観ていたが、『おむすび』は0.7%前後。半減した。同じ世代の男性(M1層)は『虎に翼』が1%前後で、『おむすび』は0.1%前後。下げ幅が大きい。
35~49歳の女性(F2層)は『虎に翼』が6%前後、『おむすび』は5%弱。同世代の男性(M2層)のみ『虎に翼』も『おむすび』も1.5%前後である。
ドラマの良し悪しを決める三要素
どうして多くの視聴者が離れたのか。ヒロイン・米田結(橋本環奈)にモデルがいないからだという意見もある。『虎に翼』における三淵嘉子さんや『ブギウギ』の笠置シズ子さんだ。
だが、実際には結にもモデルはいる。阪神・淡路大震災(1995年)の被災者たちである。同胞6000人以上が亡くなり、31万人以上が避難生活を強いられた大震災を日本人は決して忘れない。6歳で大震災を経験した結には被災者たちの姿が投影されているはずなのだ。
「現代劇の朝ドラは難しい」と見る向きもあるが、これも実例とそぐわない。『あまちゃん』(2013年上期)を始め、現代劇でも好評を博した朝ドラは枚挙にいとまがない。
『おむすび』が広く支持を得られない理由は作品内にあると見るべきだろう。主に登場人物のキャラクターとストーリーである。ドラマの良し悪しを決めるのは「1に脚本、2に俳優、3に演出」というのは古くから国内外の常識なのだ。
『おむすび』の場合、結のキャラクターに共感しにくい面がある。結は第38回(11月20日放送)で神戸栄養専門学校に入学した。登校初日は茶髪で厚化粧、派手なネイルをしていた。
「その格好で行くんか」。理髪店を営む生真面目な父親・聖人(北村有起哉)は目を剥いた。聖人と同じ思いを抱いた視聴者もいるのではないか。