裁判官も検察を厳しく批判
結局、小沢との共謀を認めた元秘書たちの供述調書は、1通を除いて証拠採用されることはなかった。
それどころか、判決ではこの検察の取り調べを厳しく批判している。
「このような取り調べ方法は、違法、不当なものであって、許容できないことは明らかである」
検察の違法な取り調べまで白日の元に晒すことになった。そして、小沢は無罪となり、田代には懲戒処分が下って、検察を辞めた。
あれから10年以上の年月が過ぎた。同じ東京地裁で、今度は5億5000万円の損害賠償を求める原告と被告の代理人として対峙する。これを因縁と呼ぶべきなのだろうか。
それよりも、『週刊文春』が報じた世間の耳目を集める芸能界の性加害疑惑で再び被告代理人となるほうが、喜田村にとってはよほど運命的な気がする。
(文中一部敬称略)
【青沼陽一郎】
1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。
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