「斎藤氏は謝るポイントがズレている」

「理由は大きく二つです。一つは、文書問題で斎藤前知事の答えがあまりにも頑なだったこと。立ち止まって修正する局面は何度もあったのに、彼は最後の最後まで(内部告発者を探し、懲戒処分した)初動対応に誤りはなかったと言い続けました。

 そして議会の不信任にまで至った。失職表明の会見で、ここは間違っていた、法的に問題はなくても、もっと適切なやり方があった、今後はこう改めたいと、再生への意志を感じられれば、自分が出ることは考えませんでした。

 しかし彼の返答を聞く限り、これは混乱が続くと思いました。誰かが新たなリーダーとなって県庁をマネジメントしなければ収まらない、と。その役割に、県議と市長をやってきた私の経験を生かせると、党派にかかわらず多くの方からお声がけいただいた。それが決断した二つ目の理由です」

インタビューに答える稲村氏

 パワハラや“おねだり”の疑惑に対し、斎藤は「自分も至らない点があった」と一定の反省は口にしているが、稲村は「謝るポイントがズレている」と指摘する。

「机を叩かない、物品受領の内規を作る、職員に感謝を伝えると言っておられますが、問題の本質はそこではない。(20メートル歩かされて激怒した件で)この先は車が入れないから皆さん降りてもらっている、(授乳室を知事控室に使った件で)ここは授乳室だから使えませんと、ごく当たり前のことすら職員が知事に言えない。自分は知らなかったから悪くないと彼は言いますが、それは違う。授乳室を控室にさせてしまうような組織のマネジメントが問題なんです」

 問われているのは結局、「知事の資質」だ。ただ、稲村は斎藤の就任時、彼に期待したと繰り返し語ってきた。斎藤の前任だった井戸敏三知事以前の県庁は、組織の硬直化が指摘されており、前回知事選で斎藤が当選した背景にも有権者からの刷新や若返りへの期待があった。