「中国が台湾を侵略するのを止めることはできない」

 フォークランド紛争で活躍したクリス・パリー元英海軍少将は10月、英議会で開かれたシンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティーの討論会で「中国は弾道ミサイルやドローン(無人航空機)など接近阻止・領域拒否(A2AD)システムに膨大な投資を行ってきた」と指摘。

「中国が台湾を侵略するのを止めることはできない。物理的に阻止することはできない。中国には台湾侵略を可能にする大量の火力がある。侵略を阻止する唯一の方法は、もし中国が侵略を実行した場合、即刻、中国へのエネルギーを含めた物流を完全に止めることだ」という。

10月17日、、中国人民解放軍ロケット軍の旅団を視察する習近平主席(写真:新華社/共同通信イメージズ)
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 ウクライナ戦争でロシア軍は黒海で艦隊を運用できなくなった。ウクライナ軍が偵察衛星や空中ドローン、水上ドローン、対艦ミサイル、長距離ミサイルを組み合わせて攻撃したからだ。「これからの戦争で水上艦艇は生き残ることができない」とパリー氏は指摘する。

「私なら英国が2隻保有する空母を西太平洋、例えば台湾有事に展開することはない。これからの海軍は潜水艦や半潜水システムに加え、水上艦艇は安価で損失が少ないモジュラー(損害を受けた部分をレゴのように取り替えられる)システムを導入すべきだ」と強調する。

 第2次トランプ政権の4年間で台湾を巡る米中の力関係は逆転している可能性がある。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。