世界で絶賛される理由

 成功の最大の理由は、アーティストの「本気度」だろう。20名の参加アーティストのひとり、彫金で人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されている金工作家・桂盛仁の制作の様子を紹介したい。

「ポケモン×工芸展ー美とわざの大発見ー」展示風景。左から、桂盛仁《ブローチ ブラッキー「眠り」》、《帯留 ブラッキー「威嚇」》、《帯留 ブラッキー「立ち姿」》2022年 個人蔵

 桂盛仁がモチーフに選んだブラッキー。ボディには銅と金の合金である赤胴が用いられているが、赤胴は薬液で煮るとかがく反応が起きて、烏の濡れ羽色とも称えられる黒色を呈し始める。桂がブラッキーのために選んだ金の含有量は「絶対的に5%!」。赤胴の色調は煮色仕上げで形成された被膜内の金の粒子に光が当たることで決まるが、5%になると「黒に紫が入り、その紫が一段と明るくワーーッて来る」のだという。

 黒一色ではないブラッキーの「黒」。月の光でイーブイの遺伝子が変化して生まれたブラッキー。そんな誕生の物語が、桂盛仁のブラッキーにはしっかりと表現されている。作品と向き合うと、黒が深くて、実にいい味わい。50年以上のキャリアをもつ人間国宝が未知なるテーマ「ポケモン」に本気で挑み、ここまで世界観を理解していることに正直驚かされた。