ロシアのドローン攻撃を受けたウクライナの首都キーウ(11月3日、写真:ロイター/アフロ)

 ロシア・ウクライナ戦争(=ウクライナ戦争)において、ウクライナは今、ロシア軍の攻勢に耐えられるか否かの重大な局面に直面している。

 世界の多くの軍事関係者は今年の年初から初夏頃まで「ウクライナ戦争の状況は膠着状態にある」と評価していた。

 しかし、11月初旬の状況を「膠着状態」と評するのは適切ではない。

 ロシア軍の攻撃が徐々にではあるが進捗していると言わざるを得ない。図1は5月1日以降10月末までにロシア軍が占領した地域(濃い赤色の部分)を示している。

 5月1日以前にロシア軍が占領した地域(薄い赤色の部分)に比較すると小さい面積だが、ドンバス地域全体でロシア軍の攻撃が進捗していることが分かる。

 11月1日付のニューヨーク・タイムズ(=NYT)は「米国の軍事および情報機関の関係者は、ロシアが着実に前進しているのでウクライナの戦況がもはや膠着状態ではなくなり、キーウとワシントンで悲観的な見方が深まっていると結論付けた」と報道した。

 米国政府の軍事アナリストたちはこの夏、訓練が不十分なロシア部隊がウクライナ防衛を突破しようと苦戦していることから、「ロシアが今後数か月でウクライナにおいて大きな攻撃進展を遂げる可能性は低い」と結論付けた。

 しかし、その評価は適切ではなかった。

 このロシア軍の攻撃前進が継続すれば、最悪の場合にはある時点でウクライナ軍の防衛網が一挙に崩壊する可能性だってある。

 もちろん苦しいのはウクライナ軍だけではなく、毎日1000人以上の死傷者を出しながら攻撃するロシア軍も同じで、ウクライナ軍の防御が成功する可能性もある。

 いずれにしても双方は攻防の天王山を迎えている。

図1:ドンバス地域における10月末の状況

濃い赤色が5月1日以降にロシアが占領した地域で、濃い青色がウクライナが占領した地域。出典:戦争研究所(ISW)のデータを基に作成したもの