リベラルな米国・大新聞社のオーナーたちはなぜ、ハリス推薦に反対したのか
「もしトラ」実現が色濃くなり、トランプの報復に怖気づく億万長者たち
2024.10.31(木)
高濱 賛
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推薦候補選びで編集権の壁をぶち壊す
大統領選挙は国の一大事、「有事」である。
4年に1度、米国民が国家元首であり、核のボタンを押せる全軍の最高司令官であり、行政の最高責任者を決める唯一最大の国事だ。
特に今回の選挙は、「対立と分断の米国」で2人の相異なる政治理念を持った政治家のどちらかを選ぶ前代未聞の選挙である。
しかも一人は無手勝流の刑事被告だ。
この国をどちらの候補に託すのかで迷っている有権者も少なくない。
「報道の自由」を錦の御旗に縦横無尽な取材力で得た豊富な情報と各分野に精通したジャーナリストたちを有する大新聞社の考え方を参考にしたいと思う有権者は少なくないはずだ。
近年、米国の新聞は、その4年に1度の大統領選に際して新聞社としての推薦候補を公にすることが恒例になっている。
通常、社説を執筆する論説委員会の10人前後のベテラン・ジャーナリストたちが徹底的な論議を経てコンセンサスを得、その結果をオーナーに提示して推薦候補者を決める。
オーナーの政治姿勢が候補者推薦に反映されるのは当然だが、編集方針にはあまりタッチしないという「編集権の壁」(Editorial Wall)があり、オーナーがあまり口を挟むことはなかった。
ところが、今年の大統領選では、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズのオーナーは、論説委員会がカマラ・ハリス民主党大統領候補を推薦するとした決定を退けたのだ。
かつてはペンタゴン・ペーパー(米国によるベトナムへの政治・軍事的関与)報道ではニューヨーク・タイムズとしのぎを削り、ウォーターゲート事件報道では他の追随を許さなかったワシントン・ポストは10月25日、オーナーの意向を受けて大統領選で特定の候補の推薦を見送り、今後も推薦しないと発表した。
べゾス氏は、「報道機関としての中立性を重視した」と言うが、介入のあり方に批判が出ている。