ハリス氏のお膝元、カリフォルニア州きっての新聞社でお家騒動が勃発(写真は1月23日撮影:AP/アフロ)

トランプ、特別検察官解雇と怪気炎

 秒読みに入った米大統領選は、カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領の中傷合戦の度合いを深め、罵り合いになってきた。

 各種世論調査では小差でリードしているトランプ氏は、自らの勝利を確信するかのように、再選を目指す最大の理由が刑務所送りを逃れるためだという本心を吐露した。

 トランプ氏は、返り咲きを果たした場合には、2020年大統領選の敗北を覆そうとした事件と機密文書を自宅に持ち出した事件を巡って「自身に恩赦を与える」よりも、自身の刑事事件を担当するジャック・スミス特別検察官を「即刻解任する」と声を荒らげた。

 トランプ氏は、ハリス氏をとらえて「馬鹿、間抜け、脳なし」と口汚く罵った。大統領候補としての品位も何もあったものではない。

 一方のハリス氏も、トランプ氏の大統領首席補佐官だったジョン・ケリー退役海兵隊大将が近著で「トランプ氏がアドルフ・ヒトラーは良いこともしたと言っていた」とする下りを取り上げ、「トランプ氏はファシストだ、ヒトラーだ」と、米国人が最も忌み嫌う独裁者の名前を上げてトランプ氏をこき下ろした。

As Election Nears, Kelly Warns Trump Would Rule Like a Dictator - The New York Times

中国系オーナーが「ハリス推薦」に拒否権

 そうした最中、ハリス氏のお膝元カリフォルニア州で有力紙のお家騒動が勃発した。

 発行部数11万8760部、全米では5位、カリフォルニア州では最も影響力のあるロサンゼルス・タイムズ(従業員2052人)の南アフリカ生まれの中国系オーナー、パトリック・スン・シオン氏(中国名、黄馨祥=57)が、論説委員会がハリス氏を正式推薦しようとした提案を拒絶したのだ。

 それに激怒したメリアル・ガーザ論説委員長が辞表を叩きつけた。

Los Angeles Times won’t endorse for president 

Leader of LA Times editorial board resigns after failure to endorse candidate

 日本のメディアとは異なり、米メディアは選挙の際には社説欄で推薦する候補者名を上げる(いない時はいないと明記する)。

 被推薦者を事実上決めるのは論説チーム(通常10人程度)だ。日本でいう論説室でその長は、Editorial Page Editor(論説委員長)だ。

 通常、論説委員長はExecutive Editor(編集主幹)の下でニュース部門の長であるManaging Editor(編集局長)と対等な立場にある。

 今回のロサンゼルス・タイムズの場合は、論説委員長がハリス氏を推薦する草案をまとめ、オーナーに提出したところ拒否されたのである。

 スン・シオン氏はその理由についてSNS「X」(旧ツイッター)にこう投稿した。

「論説委員会は、大統領選に立候補している2人の候補の政策についてポジティブな面、ネガティブな面を分析した草案を提出してきた」

「この中にはトランプ、ハリス両氏がホワイトハウスで行った政策がいかに国家に影響を与えたかについても明記されていた」

「論説委員会は、どちらの候補者を選べと言うのではなく、どうするのかについては沈黙を守るという決定をしていた。私はその決定を受け入れた」