ナショナルリーグ優勝を果たしたドジャースのデーブ・ロバーツ監督(左)と大谷翔平選手(10月20日、写真:AP/アフロ)

ブルーウォール攻防、目下ハリス0勝3敗

 米大統領選の投開票日まであと13日。

 共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)は派手なイベントや異例のメディア出演といった集中的なキャンペーンを通じ、いつもは政治に関心がないような浮動票の掘り起こしに懸命だ。

 主要メディアに相手にされない分、億万長者のイーロン・マスク氏が所有するSNS「X」(旧ツイッター)が全面支援、保守派FOXニュースは激しいハリス批判を集中的に流している。

 一方、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(60)は勝つためには必勝不可欠な「ブルー・ウォール」と呼ばれるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン3州の死守に焦点を絞り、メッセージの発信を分刻みで続けている。

 上記の3州では10月21日現在、小差だがトランプ氏の3勝0敗。ハリス陣営には危機感が広がっている。

Wisconsin : President: general election :| FiveThirtyEight

トランプが勝つ24の理由

 その最中、「選挙予想の神様」と呼ばれるネイト・シルバー氏が10月20日、「トランプ氏が勝つ24の理由」を公表した。

 列挙すると以下の通りだ。

1.  ハリス氏は一般投票で勝っても実際に当選者を決める選挙人数で負ける可能性がある(選挙人制度は共和党に有利にできている)。

2. 2022年には9.6%だったインフレ率は下がっているが、物価は依然として高止まりだ。

3. 有権者の経済に対する実感は経済データとは異なり、不況感から抜け切れずにいる。

4. 現職正副大統領は歴史的に見て大統領選では不利な戦いを強いられる(有権者は常に現状に不満を持っている)。

5. トランプ支持層は(低学歴、低所得、偽情報を信じやすい)嘆かわしい(deplorable)有権者が多い。

6. 不法移民の入国はバイデン・ハリス政権下で急増している。

7. ハリス氏は2019年の選挙では「極左」候補として立候補していた。

8. 新型コロナウイルス感染拡大、犯罪急増などの影響を受けて米世論は保守化している。

9. 有権者は、トランプ政権の最初の1年の好景気に対するノスタルジアを抱いている。

10. これまで民主党候補を圧倒的に支持してきた黒人有権者が減ってきている。

11. 多くの男性有権者、特に若年男性有権者が取り残されていると感じており、現政権を支持しなくなっている。

12.  高齢のジョー・バイデン大統領が長いこと再選を目指していたことで有権者の民主党離れが顕在化していた。

13. その結果、バイデン氏に代わって大統領選に立候補したハリス氏は大きく出遅れた。

14.  ハリス氏がヒラリー・クリントン氏に次ぐ女性の大統領候補であることが、一部の有権者の間では歓迎されていない。さらにインド系黒人であることから二重の偏見を持たれている。

15. 有権者のメディアに対する不信感が急増している(主流メディアがトランプ氏の重罪や嘘、偽情報を批判すればするほど、有権者はそれに反発している)。

16. トランプ氏は自分に批判的なメディアを敵視し、有権者のメディア不信に便乗している。

17.  民主党支持の高学歴エリート層が一般大衆にトランプ氏の弱点を説明すればするほど、低学歴労働者層はこれに反発するパターンが出来上がっている。

18. トランプ氏は米民主主義にとって死活的脅威だが、トランプ支持の有権者はまともにとらえようとしていない。

19. 全世界規模の民主主義体制の低迷、中東、ウクライナ、米中関係、不法移民の大量移動など、バイデン政権下で国際情勢は不安定化している。

20. イスラエル・ハマス紛争は、民主党の基盤を分裂させている。

21. 第三党候補として出馬した民主党左派のロバート・ケネディ・ジュニア氏がトランプ支持に転じている。

22. 億万長者の起業家イーロン・マスク氏がトランプ支持に回り、スーパーPACを通じて巨額の選挙資金を提供、さらに所有の「X」をトランプ氏に完全開放している。

23. トランプ氏が遊説中に暗殺未遂に遭ったことで、有権者の同情を集めている。

24.  ハリス氏は自らの政権の基本理念、ビジョンを有権者に訴え切れずにいる。

natesilver.net/24-reasons-that-trump-could-win?

 シルバー氏は、すでにハリス支持を公言しており、この24項の弱点は残りの選挙キャンペーンで正せと警告しているのである。

 そうでないと「トランプ氏に負けてしまうぞ」と助言しているのだ。