「人手」で捉えることは時代遅れに?
需要の影響などもあるが、労働力不足を考える上で見直したいのが「人手」という捉え方である。様々な報道や日常的に用いられる「人手」という言葉は、働く人の数を意味している。
この「人手」は一見して理解しやすいが、やや誤解を招く言葉でもある。労働者1人が働く時間はそれぞれ異なるからだ。
「人手」の観点からは、1日10時間働く人も、1日1時間働く人も、1人として数えることになる。10時間と1時間はやや極端かもしれないが、例えば一方がフルタイムで1日8時間、他方がパートタイムで1日4時間働くなら、1人が働いていることによってもたらされる労働力は異なってくる。
つまり、何人足りないかという「人手」ではなく、時間という観点をかけあわせた「労働投入量」(人手×労働時間)で捉えなければ、実際の労働力不足に迫ることは難しい。
実際、先に就業者数が増加傾向にあることを紹介した女性やシニアの労働時間は、全体平均よりも短い傾向にある。そのため、就業者、つまり人手が増えても、労働力不足は解決や緩和に至りにくい。
また、副業やスキマバイトなど様々な働き方が広がるなかで、今後、1人の労働者からもたらされる労働力にはさらに大きな差が生まれると考えられる。労働を「人手」として捉える弊害は、今後一層大きくなるだろう。