「勝利計画」に理解を示すも切り捨てるトランプ氏
2024年10月16日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、3年目に突入して長期戦となったウクライナ戦争の“出口戦略”となる「勝利計画」を公開。早ければ2025年中に終結させ、自国からロシア軍を1人残らず叩き出すという一大構想らしい。
ゼレンスキー氏が欧米に訴え続けている「もっと武器・弾薬、軍資金を」「欧米製長距離ミサイルをロシア本土攻撃に使える許可を」などの支援品目を改めてまとめたのかと思いきや、内容はかなり踏み込んだもので、正式に「核兵器保有」までちらつかせている。
ゼレンスキー氏は今年9月からバイデン米大統領を皮切りに、ハリス米副大統領、トランプ前大統領の米次期大統領選の両候補、NATO(北大西洋条約機構)諸国首脳などに計画の詳細を説明して支持を仰いだ。
ウクライナにとって最大の援助国であるアメリカのバイデン大統領から正式コメントは出ていないが、「大賛成」のはずはないだろう。
NATOのルッテ事務総長も「NATO加盟は時期と招待のタイミングが問題」と明言を避け、ドイツのショルツ首相も「NATOが戦争の当事者にならないよう注意している」と慎重だ。
ゼレンスキー氏は「勝利計画」公表の翌10月17日、畳みかけるようにトランプ氏との会談の詳細も公表した。
「NATOに加盟できなければ核兵器保有しかない」「NATO加盟が果たせるならば、核兵器保有など選ばない」と伝えると、トランプ氏は「公正な議論だ」と話し、一定の理解を示したという。11月5日に行われる米大統領選で“もしトラ”(もしもトランプ氏が返り咲いたら)が現実になった場合に備えた、ゼレンスキー氏の「根回し」の意味もあるようだ。
だが同日のインタビューでトランプ氏は、「(ロシアと)戦争をするべきではなく、(ウクライナは)負け戦だ」と切り捨てている。