戦争状態のままNATOに加盟することはあり得ない理由

「勝利計画」(The Five-part Victory Plan)の中身は以下の全5項目(別掲表)となっている。


拡大画像表示

 ゼレンスキー氏は「5項目を直ちに実行すれば、2025年中の戦争終結もあり得る」と強調するが、よく見ると戦勝に直接関係するのは②だけで、残りは“戦後計画”だ。

①の「NATO加盟交渉」はショルツ氏も念押しするように、あくまでも戦争終結が大前提だ。ウクライナと全面戦争中のロシアはNATOにとっても仮想敵で、戦争状態のままウクライナのNATO加盟など常識的にありえない。加盟した瞬間から既存の加盟国が自動的にロシアと戦争状態となるからで、「抑止力」でも何でもない。

 NATO「第5条」では、加盟国が攻撃されたらNATO全体への攻撃とみなし、全加盟国が兵力による反撃などを行うと規定。集団的自衛権の行使を明確にする。このため、戦争中の国をわざわざ迎え入れ、自国も対ロシア戦に自動参戦となることを喜んで迎え入れる民主主義国家などない。

 それ以前にNATOへの新規加盟は、既存加盟国32カ国の全会一致が鉄則で、1カ国でも反対すれば無理だ。厳密には「加盟交渉への招待」とするが、戦争中の国が加盟交渉のテーブルにつくこと自体が時期尚早、と反対する国も必ず現れるだろう。

ウクライナのドネツク東部でウーラガン多連装ロケットで砲撃を行うロシア軍ウクライナのドネツク東部でウーラガン多連装ロケットで砲撃を行うロシア軍(写真:ロシア国防省ウェブサイトより)