注目されるHYBEとの関係

 今回の騒動の発端は4月、NewJeansの所属会社ADORに対して、親会社に当たるHYBE(ハイブ)が監査に着手したことでした。ADOR株の80%はHYBEが所有しています。HYBEは、当時ADORの代表を務めていたミン・ヒジン氏が独立を画策したとして監査権を発動しました。ミン氏はその後、8月にADOR代表を解任されました。

 今回のハニさんの証言でさらに注目されるのは、NewJeansのデビュー当初から、HYBEの経営陣と会った時、「挨拶をしてくれなかった」と訴えていることです。これはおそらく、HYBEのパン・シヒョク議長の態度を指していると思われます。ハニさんは「挨拶をしないのは人間として礼儀がない。最初からパン議長はNewJeansを嫌っていたと確信している」と述べました。

 これは痛烈な告発です。いちアーティストが、所属会社の最大の権力者であるパン議長に反旗を翻したのです。

 これは凄いことと言わざるを得ません。韓国社会は上下関係が厳しい社会です。わずか20歳の女性が、権力を持った52歳の男性上司に「人間として礼儀がない」と言ったわけです。いわば下剋上です。韓国のマスコミは「伝説の誕生だ」と報道しています。

 一番大きな問題点は、最大の当事者であるHYBEのパン議長が、この件では一切表舞台に出てきていないことです。記者会見すら開いていません。彼が最大の実権を握っていることは誰でも知っています。それなのに全く表舞台に出ず、ADORの代表を入れ替え、ミン氏を排除しにかかっている。これは「卑怯だ」という印象を与えています。

 さらに、今回の騒動は、男性の権力者が部下の女性に対して、権力を使って排除するという構図でもあります。ミン氏は女性ファンの熱い支持を得ています。以前の記者会見で、ミン氏が着ていた服や帽子がネット通販で売り切れるという現象が起きました。男性の権力者と戦うミン氏は、ますます多くのファンを獲得しているのです。

 ちなみに国会で見せたハニさんの振る舞いは常に印象的でした。「さすが世界的なスーパーアイドルだ」と思わされました。韓国語では「表情管理」というのですが、表情が非常に豊かで、感情をストレートに出しています。悲しさ、悔しさのあまり泣いてしまった場面もありつつ、新代表をきりっと睨みつけたり、最後は「次に国会に来ることがあれば、もっと韓国語を勉強してきます」と笑顔で話す。今回のハニさんを見て、ファンにならない人はいないのではないでしょうか。国会議員の心を鷲掴みにしたと思います。人を惹きつける魅力のある、アイドルとしてはやはり稀有な方だなという印象を持ちました。