「私にXさんのプライバシーに口を突っ込む権利はありませんが、天才占い師の小女姫さんのことを取材しているのでお許し下さい。あなたが会ったことがあるかどうか分かりませんが、亡くなった吾郎さんの父親はあなたではないのですか。私はそうであると確信しています」

 Xさんは動揺した様子を見せたが、結局、最後まで認めることはなかった。もちろん記事が日の目を見ることはなかった。

謎は謎のまま…

 筆者がXさんを取材してから10年ほどが過ぎた2005年夏、『新潮45』に、ノンフィクション作家・駒村吉重さんによる小女姫さんに関するルポが掲載された。

 そこには「元実業家」の談話として次のような一節が載っていた。

〈実は、吾郎さんは、小女姫さんと名古屋に住む歯科医の間に生まれたお子さんなんです。一時は結婚の話まで出て、お母さんの久枝さんが熱心に準備を進めていたのですが、なぜだか彼が一方的に断ってきたようです。

 せめて子どもだけでも認知してほしいと願ったようでしたが、それもかなわず、彼女はずっと、騙されたと言って相手を恨んでいたんです〉

 この談話の主が、筆者が話を聞いたA氏と同一人物なのかどうかは不明だが、「名古屋在住の歯科医が吾郎さんの実の父親」という説は、一定の信ぴょう性があったということではないだろうか。

 小女姫さんと吾郎さんが亡くなってから30年経ち、殺人の実行犯とされた福迫受刑者も殺された。その出生から最期まで多くの謎に包まれた藤田小女姫さんと吾郎さん。その謎は永遠に解明されることはないのだろうか。