「実は実際には彼女は妊娠して吾郎さんを産んでいます。そのことを隠すために養子を貰ったことにして戸籍を作ったんです」

「はぁ~?」

 にわかには信じられないような話だった。

小女姫さんの交際男性

 怪訝そうにしている筆者に、Aさんは続けた。

「さっきも言ったように占い師にとって一番大事なのは霊感です。子どもを産んだとなればその能力は失われると信じられていましたから、出産の事実は隠したい。まぁ出産したころから彼女の能力が落ちたのは確かですが、それが出産のためなのかどうかは分かりません……」

 Aさんの話が真実なのか、筆者には全く見当もつかなかった。しかし、小女姫さんと吾郎さんの本当の関係をひも解いていけば、小女姫さん・吾郎さん殺害事件を解く糸口が見つけられるかもしれない。そんな思いが膨らんできた。

 そして後日、筆者はAさんから、小女姫さんの交際相手だった男性、つまり吾郎さんの実の父親の所在地を聞き出した。あわせて、養子として吾郎さんを預けたとされる夫婦の住所も、だ。

24歳当時の藤田小女姫さん。政財界の大物からも重用されていた=1962年12月撮影(写真:産経新聞社)
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 ならば後はウラを取らなければならない。まず、かつて小女姫さんが暮らしていたという名古屋に向かった。情報通りに小女姫さんの交際相手とされるXさんという男性は名古屋で大きな歯科医院を営んでいることが分かった。驚くような大きな歯科だった。がぜんAさんの情報の信ぴょう性が増してきた。