一時4万円台を付けた日経平均株価を示すモニター=10月15日午後(写真:共同通信社)

石破茂新政権が発足して半月ほどが過ぎました。その間、株価は大きく値を上げることもなく、市場は静観を続けている状態です。かつては新政権が発足すると、株式市場は「ご祝儀」で値上がりすると言われていました。いわゆる「ご祝儀相場」です。本当にそんなことが起きていたのでしょうか。それとも都市伝説なのでしょうか。「新政権とご祝儀相場」をやさしく解説します。

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石破政権の経済政策に目新しさはなし

 新しい首相が就任すると、その発言は国内外の耳目を集めます。近年の日本経済はふるわず、国内総生産(GDP)ではドイツに抜かれ世界4位になりました。今も世界で指折りの大国であるとはいえ、日本経済をデフレから脱却させ、成長軌道に乗せるという課題は政治に突きつけられたままです。

 その課題に石破首相はどう立ち向かうのでしょうか。

 自民党総裁選で勝利して以降、石破首相は何度か自身の経済政策に言及しています。例えば、臨時国会で内閣総理大臣に指名された10月1日。石破氏は同日夜、首相官邸で初の記者会見に臨み、経済分野について次のように述べました。
 
「日本経済はデフレを脱却するかどうかの瀬戸際。『賃上げと投資がけん引する成長型経済』を実現するため、岸田政権で進めた成長戦略を着実に引き継いでまいります。経済あっての財政との考え方に立ち、デフレ脱却最優先の経済財政運営を行ってまいります。その第一歩として、早期に物価高で苦しんでおられる方々を支援してまいります」

 さらに、コストカット型経済を高付加価値創出型経済へ転換させると強調。自動車や半導体、農業など輸出企業を軸に産業の生産性を向上させるなどと語りました。岸田内閣の「資産運用立国」を引き継ぐほか、持続的な実質賃金の向上に取り組んでいくとも力説しました。

 ただ、この間の石破首相の発言に目新しいものはありませんでした。岸田政権の経済運営を引き継ぐとは繰り返しましたが、どのような形で引き継ぐのか具体的な内容は明らかになっていません。

 そうした姿勢が影響したためか、東京株式市場は石破新政権の誕生を好感する値動きにはなっていないようです。石破氏が自民党総裁選に当選して最初の取引となった9月30日の日経平均株価は大幅に下落。終値ベースの比較では、前週末より1919円01銭安(マイナス4.8%)の3万7919円55銭にとどまりました。石破政権の誕生を歓迎する「ご祝儀相場」とは、ほど遠い結果だったのです。

 日経平均株価は10月15日午前の終値で、前週の終値より600円以上も高くなり、4万232円45銭を記録しました。取引時間中としては7月19日以来、約3カ月ぶりに4万円台を回復しました。しかし、この動きは米国の株高や円安傾向を反映したものであり、石破首相へのご祝儀とは無関係のようです。