大統領夫人と与党代表との間に深い溝

 一つは金夫人側と関係がある元大統領府行政官が、左派ユーチューバーに「韓東勲(ハン・ドンフン)国民の力代表を攻撃してくれれば金夫人も喜ぶ」と話している通話音声が公開されたことだ。録音ファイルの声の主はキム・デナムという元大統領室行政官で、尹錫悦大統領が候補者時代から選挙キャンプに合流し、選挙運動を支えた功労によって尹氏の大統領就任後、大統領府行政官に引き立てられた人物だ。

 キム・デナム氏は今年5月の総選挙に出馬するため大統領府を辞めたが、その選挙で、国民の力の公認から漏れてしまった。そのことで当時の選挙対策委員長だった韓東勲代表に個人的に恨みを抱いたようだ。

 国民の力の党代表選出のための党内予備選挙の真っ最中だった今年7月、キム・ナデム氏は『ソウルの声』という左派ユーチューバーに電話をかけ、「韓代表を攻撃してほしい」として国民の力の内部資料を提供したのだ。この事実は該当ユーチューバーが最近公開した当時の通話録音ファイルで明るみに出た。そしてその音声ファイルの中には「(金建希)夫人が韓東勲候補のせいでひどい目にあっている。上手に企画して(韓候補を)叩けば、夫人が喜ぶだろう」という発言が含まれていた。

「国民の力」の韓東勲代表(写真:Lee Jae Won/アフロ)
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 実際、総選挙敗北直後から大統領室と韓東勲代表は「決別」と呼んでもいいほどの対立状態にあった。

 きっかけはやはり金建希夫人だ。