保守系メディアからも見放された大統領夫人

 金建希夫人関連疑惑が事あるごとに政権の足を引っ張る中、耐えかねた保守メディアからも苦言が出ている。

『朝鮮日報』は、民主党が主張する尹大統領弾劾の可能性はほとんどないとしながらも、「金夫人の問題を解決できなければ、尹大統領は任期中ずっと弾劾に準ずる境遇になるだろう」と警告した。『中央日報』は「(金建希特検法が再び発議されれば)怒った民心に追われる与党が、政治的生存のために独自の道を歩むだろう」とし、「(そうなる前に)金夫人が国民の前に立って心から謝罪し、“妻の役割だけに専念する”といった大統領選挙前の約束を守るようにしなければならない」と尹大統領に要求した。

『東亜日報』は、「大統領選挙の時から3年以上保守陣営全体を侮辱している金夫人問題の泥沼から抜け出すためには、大統領夫人も一般国民の誰もが適用される手続きを経て公正で厳正な司法処分を受けること以外に、いかなる出口もない」と一喝した。

 保守メディアは、金夫人の国政介入の噂についても信憑性を補強するような記事を出し始めた。

『東亜日報』は、「金夫人は尹錫悦政権誕生に自分も相当な持分があると思っているらしい」「かなり以前から政界周辺ではV1、V2という言葉が出回っていた。VはVIPという表現で大統領を指すが、V2は金女史の影響力が強大だという趣旨の新造語」と説明した。『中央日報』は、「首席らがいる席で金夫人が大統領を無視するような言動をする場面を何度も目撃した」という与党核心関係者の話を引用報道している。

2023年9月、ニューヨークの国連本部での尹錫悦大統領の演説を、足を組んでじっと聞く金建希夫人(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
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 10月16日に行われる再・補欠選挙を控え、国民の力の内部からも、金夫人と尹大統領に対する不満が噴出しはじめている。果てしない「金建希リスク」で、大統領支持率と政党支持率のいずれもが政権発足以降、最低値を更新しているためだ。

 愛妻家で知られる尹錫悦大統領は、特別検事の捜査から愛する妻を守り通そうとするだろうが、自分の政治生命を賭けてまで大統領夫人を守ろうとする国民の力の議員はいないだろう。早ければ来月にも新たに発議される3度目の金建希特検法が、尹政権の運命を決めることになるかもしれない。