例えば、先ほど引用した「Future of life Institute」の公開書簡の一部を見てみましょう。

「・・・よって、私たちは、すべての AI 開発研究室に対して直ちに、少なくとも 6か月間、GPT-4よりも強力な AI システムのトレーニングを停止するように要求する」

「この『停止』には全ての主要なAI開発関係機関が含まれ、停止の状態は広く社会公開され、(本当に停止しているかの)検証も可能であるべきである」

「また、このような一時停止が(企業などによっては)すぐに実現できない場合には、各国政府が介入してモラトリアムを導入する必要がある」

(Therefore, we call on all AI labs to immediately pause for at least 6 months the training of AI systems more powerful than GPT-4. This pause should be public and verifiable, and include all key actors. If such a pause cannot be enacted quickly, governments should step in and institute a moratorium.)

 というのですが・・・。

 まずそもそも、合法的な研究開発が各社で進められているとき、政府が介入して強権的に「モラトリアム」つまりAIの学習トレーニングを停止する、いかなる法的根拠、どのような「法理」が西側の先進圏諸国にあると言うのでしょう? 

 北朝鮮や中国、ロシア、あるいはサウジアラビアなどであればまだしも、こんな暴力的な「開発停止」への介入など、先進諸国で実施できる法的根拠などあるわけがない。

 つまり、この「公開書簡」そのものが、相当な鼻薬の産物であると、眉に唾をつけて観察しなければならないことが分かるでしょう。

 こうした「情報公開」そのものが、一種の「それらしく仕組まれたフェイク」偽情報というべきであると、あえてここでは断言しておきます。

 というのも、ほかならず、ヒントン博士がグーグルを去った理由の主なものも、こうした「偽情報」の流布によって、選挙結果が左右されたりするリスクについて、自由な立場で発言できる足場を確保しておきたいからにほかなりません。