OpenAIの行方を象徴しているローレンス・サマーズ元米財務長官(右)の人事。写真は1月20日のダボス会議で当時の日銀総裁・黒田東彦氏と世界経済を語るセッションで(写真:Photoshot/アフロ)

 一見したところ、実に目まぐるしい展開でした。実は出来試合であったと思われますが・・・。

 11月17日金曜日、やや変則的な「非営利法人OpenAI」の取締役会が開かれ、そこで「サム・アルトマンCEO(最高経営責任者)の解任が告げられた」との報道が流れました。

 そして、数日のゴタゴタを経てわずか4日後の21日、アルトマンのCEO復帰と理事会の「大幅刷新」が伝えられ、一通りの収束を見せた・・・ように見えます。

nikkei.com 

 この騒ぎはいったい何だったのでしょうか?

 そもそも、マイクロソフトを巻き込んでの寸劇的な「人事ショー」やら、社内多数派工作が見え見えの「激怒したスタッフがどーしたこーした」といったリーク(businessinsider.jp)やら、出来試合の臭気が濃厚に漂う、可笑しな出来事でありました。

 この「アルトマン事変」、いったい誰が「得」をしたのか?

 それを読み解くカギは「2つのOpenAI」という2重構造にあります。ここから事態を読み解いてみましょう。

 「非営利法人」をかなぐり捨てたOpenAI

 読者の皆さんは、表記が曖昧な日本語のOpenAI記事の類は無視するのをお勧めします。

 というのは、OpenAIは2つの法人が二重構造をなしており、両者を取り違えると事態の理解が困難になるからです。

 OpenAIは、本体である「非営利法人OpenAI」と、その子会社である「営利法人OpenAI Global, LLC」の2つの組織からなっており、その支配関係はかなり特殊です。

1 「非営利法人OpenAI」は「人類全体に利益をもたらす汎用AI」の開発、普及を目指すとして設立された、極めて理想主義的でリバタリアン的(世界政府的と言ってもよいでしょう)な組織です。

2 この「非営利法人」が完全所有する子会社として「営利法人」が設置されています。

3 さらに、この「営利法人」の子会社として「持ち株会社」が設置されているが、営利法人の利益再分配には上限が設けられており、余剰分は非営利法人に寄付の精神で還元される、という入れ子構造を為しています。

 なお、株式の49%はマイクロソフトが出資しており、クラウドでグーグルに連敗してきたマイクロソフトがAIでの失地回復を念頭に資金を注入した面があるといえるでしょう。