(写真:ロイター/アフロ)
  • 対話型AI(人工知能)「チャットGPT」を開発した米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が突如解任され、4日後に再び復帰するという騒動が起きました。
  • 世界的な生成AIブームの火付け役である米新興の「お家騒動」の背景にあるのが、非営利組織が統治する特殊なガバナンス構造です。
  • そもそもオープンAIとはどのような成り立ちの組織なのか、やさしく解説します。(JBpress)

全人類のために汎用AI(AGI)を開発

 オープンAI(OpenAI)は米サンフランシスコに本拠地を置く人工知能(AI)のスタートアップです。オープンAIは2022年11月に対話型AI「チャットGPT(ChatGPT)」を公開しました。「チャットGPT」はさまざまな分野にAIが的確に回答するなど質の高さが話題となり、公開後の約2カ月間で利用者数が1億人を超えるなど瞬く間に世界的なブームを起こしました。オープンAIの企業価値は約860億ドル(約13兆円)にまで達すると言われています。

オープンAIの創業者でCEOのサム・アルトマン氏。突如解任されたが4日後に復帰した(写真:AP/アフロ)

 もともとオープンAIは、現CEOであるサム・アルトマン氏と、電気自動車(EV)のテスラやSNSのX(旧Twitter)などを経営する米起業家イーロン・マスク氏を共同議長とし、2015年に創設されました。多くの危険性をはらむ高度なAIの悪用を防ぎ、「全人類に利益をもたらすAGI(汎用人工知能)の開発」を目的とし、非営利のAI研究組織「オープンAI Inc(Open AI, Inc.)」として発足しました。

オープンAI創業当初の出資者でもあるリンクトイン創業者のリード・ホフマン氏(写真:ロイター/アフロ)

 当初、「株主ではなくすべての人のために価値を構築する」として「研究者は論文やコードなどを公開することを強く奨励し、特許も世界と共有する」と説明していました。そのため株主は存在せず、マスク氏やビジネス向けSNS・リンクトイン(LinkedIn)共同創業者のリード・ホフマン氏、他IT起業家や企業などからの10億ドルの寄付を集めることを目標に運営がスタートしました。  

(出所:Open AIの資料を元にJBpress作成)

 オープンAIは設立から約3年後、体制を軌道修正します。2019年に営利企業「オープンAI グローバル LLC(OpenAI Global, LLC)」を設立。これまでの非営利組織「オープンAI Inc」が持ち株・管理会社を通じて営利企業を間接的に保有・管理する形になりました。