CEO解任騒動はなぜ起きた?

 オープンAIは2023年11月17日、CEOのサム・アルトマン氏の退任を突如発表しました。退任理由について「(アルトマン氏は)理事会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直ではなく、責任を行使する能力に支障をきたしていると結論付けた」と説明しました。同時に、グレッグ・ブロックマン社長の退任も明らかにしました。

アルトマン氏は2023年5月、米上院司法委・小委員会の公聴会でプライバシーへの懸念などについて証言(写真:AP/アフロ)

 背景にはスピード感を持った事業の成長を目指すアルトマン氏側と発足理念を遵守しAIの安全性を重要視する理事会との間に意見の相違があったと考えられます。11月23日現在、ロイター通信などはCEO解任発表前に社内の研究者らが人類を脅かす可能性のあるAIの発見について警告する書簡を理事会に送っていたことがわかったなどと報じています。

 ただオープンAIの社員らがこれに猛反対します。解任発表後の11月20日には、理事会の総退陣と解任されたアルトマン氏の復帰を求める署名に9割超が署名する事態となりました。

 こうした事態を背景に11月21日、一度はマイクロソフトへ入社する方向だったアルトマン氏は再びオープンAIのCEOに就きました。ただし、アルトマン氏は理事には復帰せず、新たな理事が加わる体制をとっています。

 今回の解任劇はAIを制御する体制が不十分である可能性を露呈する形となりました。「チャットGPT」が生成AI市場を牽引し、その市場の規模(2023年)は7兆円近くまで達するとの調査もあります。生成AIの開発はオープンAIのようなスタートアップらが牽引していますが、高度なAIを制御できるガバナンス体制がなければ、人類が危険にさらされる可能性も指摘されています。

【主な参考資料】
OpenAI Blog(OpenAI)
Our structure(OpenAI)