「この地で人生を全うしたい」若者がそう願っても…

片山氏:例えば、国は地方に行政改革を促しました。いわゆる地方行革です。地方は国から「人件費を減らせ」「職員定数を減らせ」ということを言われ続けました。その結果まず減らされたのが、例えば図書館の司書さん。知的で立派な職業で、たいてい女性が多いのですが、正規職員だったのが非正規にされました。

 それから保育士です。昔は自治体の正規職員でしたが、保育士も非正規にされたり、外部委託にされたりしました。有期雇用となり、不安定な身分になりました。

 小中学校の教員だってそうです。正規の教員を減らした結果何が起きているかというと、いま担任の先生までもが非正規だという状況も地域によっては出てきました。残った正規の先生にしわ寄せがきて、学校はブラックな職場だねというイメージにもなっている。

 いずれも、若者にとって魅力がなくなるわけです。地域で生まれ育った若い優秀な人たちが、「生まれ育った地域で人生を全うしたい」「この地で自己実現をしたい」「社会貢献したい」と思ったとしても、地域に何があるんでしょうか。特に女性がそう思わざるを得ない状況がますます進行していると思います。

――仕事も含め、東京にはいろんな魅力的なものが集まっています。若者にとっては、やはり東京がおもしろそうだということになってしまいます。

片山氏:自治体はそうした発想をしっかり持たなければなりません。政府の方ばかりを向き、「どうすれば補助金をとれるだろうか」と考えるのではなく、「若者にとって魅力的な地域になるためにはどうすればいいだろうか」という視点に変えていかなければなりません。

 また、東京一極集中の是正をするならば、国としても国策として何かやらなければなりません。一番簡単なのは、いささか荒っぽいやり方ですが、東京の生活コストを本来の高さに上げることでしょう。

――東京の生活コストを本来の高さに上げる、官による打ち手はどんなものが想定されますか?