パイを奪い合う、愚かなことにエネルギーを費やすべきではない

――東京一極集中が進み、近年では生まれた子の3割が東京圏出身だというデータもあります。地方を知らない東京圏出身者が増え、霞が関に行き、政府の政策を担うようになる。そうしたスパイラルに陥っているようにみえます。

◎日経新聞電子版「生まれた子ども、3人に1人は東京圏 2022年」(2023年5月1日)

片山氏:官僚だけでなく政治家もそうです。一票の格差解消ということで、地方の定数が減る一方、東京なんかすごく増えています。鳥取県は参院選で島根県と合区までされています。

 もちろん地方出身の国会議員もいますが、2世3世の世襲が多いです。そういう方々は、地方の選挙区選出といっても、東京生まれの東京育ちでしょう。岸田さん(衆院広島1区)もよく、開成高校(東京都)の同窓会の話題が出てきましたね。安倍さん(現職時代は衆院山口4区)も麻生さん(衆院福岡8区)もみんなそう。選挙区は地方でも、生まれ育ちは東京です。

 中央政府が地方を温かく見守って、緩やかに支援していく。そういう状況にしていかなければなりません。「計画を作って持ってこい」とか「こういう基準を満たしたら補助金やるよ」というのではダメです。もっとソフトな制度にしていってもらいたいです。

――国が地方創生の旗を振った結果、自治体は自分たちのところに移住者を増やそうと躍起になりました。人口全体のパイが減っている中で、奪い合いが起きています。

片山氏:人口問題は、本当は国が取り組まなきゃいけない問題ですよ。でも国もお手上げ状態だから、地方の問題に転化しちゃったんですね。

 政府が自治体に策定を求めた地方創生総合戦略でも、国はいの一番に「少子化対策」を書かせました。V字回復は無理だけど、どうやったら減らない状態にできるのかをまず示せと。

 市町村の方も、少子化対策の効果がすぐに出るもんじゃないということがわかっています。すると、いきおい移住とかUIJターンとか、必ずそういう話になる。結果、みんなそこに力を入れるわけです。

 そんな不毛な奪い合い競争に莫大なエネルギーと金と労力を費やすことはもうやめなければなりません。

 その点では、私は岸田政権は賢明だったと思います。その効果のほどはともかく、国主導で異次元の少子化対策をやりますという方針を打ち出しましたから。少子化対策を地方に押し付けないで、国の責任だと位置づけたわけです。この点は評価していいと思います。

――地方創生では「東京一極集中の是正」が掲げられましたが、コロナ禍の一時期を除き、トレンドを変えることはできませんでした。

片山氏:「本当に若い人にとって魅力のある地域づくりをしていますか?」という問いに対して、果たして国も地方も、自信をもってイエスだと答えられるでしょうか。