いますぐ取り組むべき3つのカスハラ対策

 会社ができるカスハラ対応施策は、大別して以下の3つがある。1つ目に、カスハラを未然に防ぐ施策、2つ目に、現場対応をトレーニングする施策、3つ目に、カスハラの被害を最小化する施策だ。まずは、第1のカスハラを「未然に防ぐ」施策について考えてみたい。

 近年日本でも広がってきたように、店舗・事業所に設置する監視カメラやポスターによる掲示といった施策は、一定のカスハラへの抑止効果が期待できる。「カスハラ」という言葉が広がると同時に、そうした啓蒙によって「やってはいけないこと」という意識は広がるだろう。また、セルフ・レジなどの対応を増やすことも、カスハラ発生機会そのものを低くする。

 しかし、日々ニュースに報道されるように、カメラや録音などがされていても、カスハラは多くの現場で起こっている。カスハラを未然に防ぐことは一定狙えるが、どうしても防ぎきることはできないだろう。これが、社内でコントロールしやすい職場でのセクハラやパワハラと異なる点だ。

「謝罪のバリエーション」で時間稼ぎも

 次に、2つ目の現場対応のトレーニングについてみてみよう。

 カスハラが起こったときの現場の対応については、小売りや飲食、コールセンターといった現場の体験知から、様々な知見が積みあがっている。

 具体例を挙げよう。未熟な従業員が現場で厳しいクレームを受けたとき陥りがちなのは、恐怖でただただ「申し訳ございません」の連呼になってしまい、さらに客の怒りを買うことだ。

 これに対して、カスハラ対応の訓練ではしばしば、「謝罪のバリエーション」について教えられる。「ご不便/ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」「ご足労をおかけし、申し訳ありませんでした」と、部分的な謝罪を入れつつ、謝罪表現にバリエーションをつけることでコミュニケーションを軟化させる時間を稼ぐ。

 また、「金銭を要求する」「土下座を要求する」など、どこまでの要求・発言がでたら上司や会社対応に切り替えるのか、ないしは警察通報へと対応モードを切り替える、という具体的なマニュアルを用意し、周知することも有効だろう。

 こうした具体的知見は、すでに一般書としていくつも発刊されている。それらを参考にしてマニュアル化したり、参考図書として配布したりするのも良いだろう。

 さらに、昨今この領域で注目が集まるのは、AIを活用したツールである。