外貨準備のドル比率とドル相場の相関が薄れた理由

 通貨には価値保蔵・交換・価値尺度という3つの機能がある。上述した世界の外貨準備の潮流を見る限り、価値保蔵手段に関して言えば、ドルおよびユーロの2大通貨のプレゼンスは徐々に、しかし確実に弱まっていることは間違いない。

 とはいえ、依然として交換手段および価値尺度手段としてのドルには旺盛な需要があり、それゆえにドル相場の価値は底抜けせずに済んでいるという解釈もできる。

【図表③】

ドルの名目実効為替相場とCOFERのドル比率
拡大画像表示

 図表③に示すように、ドルの名目実効為替相場(NEER)は2001~02年頃から2007~08年頃まで一方的な下落に直面しているが、その後は現在に至るまで上昇基調にある。

 片や、COFERにおけるドル比率も2001~02年頃から2007~08年頃にかけて低下基調にあったし、その後、2016年頃までは上昇する期間もあった。

 もちろん、これらは単なる相関で因果はないのかもしれないが、1999~2016年頃の時代はリザーブマネーがドル相場に持つ影響力が相応に強かったのではないかと思わせる状況証拠である。

 ちなみに、1999~2016年頃という期間はユーロ誕生により「第二の基軸通貨」期待が過熱し、収束していった局面に相当する(図表④)。

【図表④】

ユーロの名目実効為替相場とCOFERのユーロ比率
拡大画像表示

 ラフに言えば、2000年代最初の15年間は各国中銀の外貨準備において「ドルからユーロ」、そして「ユーロからドル」というリバランスが相場に影響していた時代なのかもしれない。

 では、2016年以降、ドル相場とドル比率の相関が薄れたのはなぜか。2016年10月1日から人民元がIMFの特別引き出し権(SDR)構成通貨として採用されたことが少なからず関係しているのだろう。