総裁選における石破氏の勝利はある種のサプライズだった(写真:AP/アフロ)総裁選における石破氏の勝利はある種のサプライズだった(写真:AP/アフロ)

 自民党の総裁選を経て、石破茂氏が第28代総裁に選出された。石破氏が選出された直後から大幅な円高・株安になるなど市場は荒れ模様だ。10月1日に首相に就任する石破氏の下、金融政策はどうなるのだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

石破政権は本当に経済政策に疎いのか?

 9月27日の自民党総裁選挙を経て、石破茂氏が第28代総裁に選出された。現時点で金融市場の評価は非常に手厳しいもの(大幅な円高・株安)になっているが、高市早苗氏への当選期待で積み上がっていた円売り・株買いのポジションが現実を見て巻き戻されているだけでもあり、「石破ショック」でもあり「高市ショック」でもあるという読み方がフェアであろう。

 経済政策に疎いとされる評価に関し、石破氏は「私にいろいろ至らぬ点があるからだ」と述べている。それは相応に事実なのかもしれないが、そうであればこそ財務・経産などの閣僚に誰を据えるかが重要であり、まずはその人選が注目される。この点、現時点で枢要なポストに関する観測報道が出ているが、未確定ゆえコメントは控えたい。

 ちなみに、筆者は2022年3月、石破総裁率いる水月会で講演を依頼されたことがある。2022年3月と言えば、今の円安局面の起点となった時期だ。その時点でパンデミックや戦争を受けた円相場の構造変化などについて関心を寄せる政治は決して多数派ではなかった。現時点の経済・金融関連の知見に乏しい部分があるとしても、広くアンテナを張る政策姿勢には期待したいと思う。

 財政・金融政策に対する憂いは、現時点で相応に払拭されているようにも見える。

 9月27日、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」に出演した石破総裁は、「必要であれば財政出動する。金融緩和基調は基本的に変えることはしない」「日銀が政府の子会社だとは思っていない。連携を密にしながら、それぞれが適切な判断をしていく」と述べている。

 経緯は分かりかねるが、出演番組として「WBS」を選んだあたり、経済に弱いとされる自身への評判を慮ったのかもしれない。

 石破総裁誕生を受けて、海外市場を中心として日銀による10月利上げの確度を高く見積もろうとする向きが目立ち始めている。