トップダウンだけでは継続的に成果を上げ続けられない

 小泉氏にしても橋下氏にしても、強烈な個性とある種のカリスマ性があり、国民・住民から大きな期待を集めていた。だからこそ、たとえ内部に多数の敵を抱えていても改革に一定の成果を上げることができたのだ。

 当然ながら、それは並のリーダーにできる芸当ではない。いくら官僚として優秀な人材でも、トップに立って一人で改革を成し遂げ、政策を推進することはできない。強引に改革を進めようとすると必ず壁にぶつかるし、逆境に陥ったときは四面楚歌になる。

 実際、今回も斎藤知事が議会やマスコミから厳しく追及されたとき、県組織の内部から知事を擁護する声はほとんど聞こえてこなかった。

 知事は県民のほうだけ見て仕事をしていたらよいとか、実績を上げているので評価すべきだという見方があるかもしれない。しかし、そこには重大な問題が隠れている。

 たとえ3年間で実績を残していたとしても、職員の気持ちが離れたままで引き続き実績を上げ続けられるか分からない。

 企業でも役所でも改革派のリーダーがトップダウンで大ナタを振るい、とりあえず既得権を排除したり、利益を上げたりすることは比較的たやすい。しかし継続的に成果を上げ続けるには、組織のメンバーによるボトムアップ型の体制が必要になる。

 実際、職員と対決姿勢を取り、当初は住民の支持を追い風に改革を進めた各地自治体の首長も、昨今は小さからぬ逆風にさらされ改革が頓挫する例が目立つ。斎藤知事の場合も、仮に出直し選挙で当選して新たに4年の任期が与えられたとしても、職員との溝が埋まらないまま成果を上げ続けられるとは思えない。

 百歩譲って、仮に県民のための政治が評価され、成果を上げ続けられたとしても、それをもって職員軽視が許される時代ではないことを知っておくべきだろう。

動揺した様子も見せず、出直し選挙に出馬すると表明した斎藤元彦兵庫県知事動揺した様子も見せず、出直し選挙に出馬すると表明した斎藤元彦兵庫県知事(写真:共同通信社)