2024年10月23日に東京証券取引所(プライム市場)に上場する東京メトロ2024年10月23日に東京証券取引所(プライム市場)に上場する東京メトロ(霞ヶ関駅、写真:ロイター/アフロ)

 東京メトロは2024年10月23日に東京証券取引所(プライム市場)に株式を上場することを発表した。上場時の東京メトロの時価総額は6400億円規模になると見られており、投資家たちや鉄道ファンから熱い視線を集めている。果たして上場後の東京メトロは、どんな鉄道会社を目指すのか。今後の展望についてフリーランスライターの小川裕夫氏が解説する。

たびたび棚上げされてきた民営化議論

 東京メトロの株式上場が今年10月に迫っている。東京メトロは、2004年に営団地下鉄を民営化する形で発足した。同社の全株式は国(財務省)と東京都の2者が持ち、市場で売買できなかった。そのため、完全に民営化したとはいえず、早期の上場が検討されていた。

 当初、2009年に上場する予定だったが、機が熟していないことを理由に上場は見送られた。その後も何度か上場するタイミングがあったものの、繰り返し延期されている。そのため、同社は完全民営化を果たせないままになっていた。

 上場が延期された理由のひとつに、東京メトロの新線建設が継続中だったことが挙げられる。地下鉄の新線建設は、工費と工期が莫大になる。それは地上を走る鉄道とは比較にならない。

 2008年に副都心線が開業したことで新線建設は一定のメドがつき、東京メトロは鉄道を運行することに専念できる状態になった。これで本格的に完全民営化の議論が加速するように思われた。

 ところが、このタイミングで今度は石原慎太郎都知事(当時)による地下鉄一元化が提唱される。都内には東京メトロと都営地下鉄が地下鉄を運行しており、両社は運賃体系も異なり、利用者に不便を強いていた。そのため、統合して利便性を向上させようという目的があった。

 この議論が出てきたことで、再び完全民営化は棚上げされた。石原都政で地下鉄一元化の議論をリードしたのは猪瀬直樹副知事(現参議院議員)だ。その後、猪瀬氏は2012年に都知事選に出馬して当選したが、都知事在任中も東京メトロ株の売却話に進展はなかった。

猪瀬直樹氏(2011年撮影)2010年、猪瀬直樹副知事(当時)が提唱したことにより、国と東京都と東京メトロが話し合う「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が発足。その第1回が翌年に国土交通省で開催された(2011年2月、筆者撮影)

 今回の上場は2021年に国土交通省交通政策審議会が完全民営化の早期実現を求める答申を出したことに端を発している。答申を受け、国と東京都は同時・同率で株式を売却することに合意。売却に関する協議が重ねられてきた。

 現在、東京メトロ株は国が53.4%、東京都が46.6%を保有しているが、上場に伴い国が26.7%、都が23.3%の合計50%を売り出す。