(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手がレギュラーシーズンで史上初となる50本塁打、50盗塁(50―50)を達成した。現地時間19日のマーリンズ戦は自身初の3打席連続本塁打をマークし、前人未到の記録を「51―51」へ伸ばし、同20日は「52―52」へと更新した。メジャー史に名を刻んだ金字塔を打ち立てた大谷選手を日本のメディアはどう報じたか。
5つのスポーツ紙(日刊スポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、サンケイスポーツ、デイリースポーツ、東京中日スポーツ)と、全国紙の朝日、読売の2紙を加えた7紙の紙面を読み比べた。原則的に個別の取材を受けない大谷選手のコメントは横並び。データやビジュアル、関係者らのコメントで差別化を図ることに苦心したことが読み取れるが、他紙を圧倒した記事は見当たらず、「大谷報道」の現状と課題が垣間見えた。
スポーツ紙の扱いは破格だった。日刊、スポニチ、サンスポ、さらには巨人の報道に手厚い報知の4紙が、1面と終面(最後のページ)を見開く構成で大々的に報じた。
東京中日スポーツもこの日は、中日ではなく大谷選手を1面で扱い、デイリースポーツは1面は阪神で譲らなかったものの、終面は大谷選手だった。各社とも、2面以降でも大きく関連記事を掲載した。朝日、読売も1面で快挙を報じ、運動面や社会面にも展開した。
多くの紙面を割くスポーツ紙は、大谷選手の試合後の一問一答を詳細に掲載しているが、これは各社による合同での取材のため、同じ内容になっている。
かつての取材であれば、過去の囲み取材などで記事にしていないコメントやメモが残っていることもあるが、インターネット速報時代において、注目選手の場合は話した内容は即座に全文掲載される。こうした背景もあり、各媒体がほかの記事で差別化にアイデアを絞ったことがうかがえる。