2024年8月、世界シェア3位に転落
アップルは世界のスマートフォン市場で、華為技術(ファーウェイ)などの中国勢、サムスン電子などの韓国勢と激しい競争を続けています。
米国の調査会社IDCによると、2023年には世界で11億6690万台のスマートフォンが出荷されました。世界的なインフレで前年比2.2%減となるなか、アップルは同3.7%増の2億3460万台を出荷。市場占有率も2割を超えました。2位のサムスン電子は2億2660万台を出荷したものの、前年比は13.6%減。13年ぶりに首位の座から陥落したのです。
ただ、iPhoneが厳しい環境に置かれていることに変わりはありません。
2023年は年間を通じて首位だったものの、2024年1~3月期の出荷台数は前年同期比10%の大幅な減少を記録したのです。4~6月期はプラスに転じたものの、伸び率は2%とわずか。直近の2024年8月には世界のスマートフォン販売で3位に転落し、サムスン電子、中国の小米(シャオミ)に抜かれてしまいました。
低迷の大きな理由とされているのが、新しい機能の搭載が遅いことです。iPhone 16シリーズには生成AIのApple Intelligenceが搭載されていますが、AIを利用した機能ではAndroid端末の方が先行しています。米グーグルのOSであるAndroidを使うスマートフォンでは多くのメーカーが新機能を競って搭載しますが、アップルは自社のみで開発を続けているため、コスト負担が大きく、競争による技術開発も生じにくいとされているのです。
スマートフォン市場では今後、製品の主流はAI機能を搭載した「AIスマホ」になると言われています。調査会社の予測はさまざまで、例えば、カウンターポイントは「生成AIスマホの世界市場シェアは2024年の8%程度だが、2027年までには40%に拡大し、出荷台数は5億台を突破するだろう」と指摘。一方、MM総研は①2024年度のAIスマホ出荷台数は1149万台で、スマートフォン市場全体の44.2%を占める、②2025年度は1913万台(AIスマホ比率71.5%)、2028年度には2317万台(同88%)へ拡大するなどとする予測を公表しています。
技術開発競争はAI分野に限った話ではありません。中国の華為技術は2024年9月初旬、三つ折の折りたたみ式スマートフォンの予約販売を始めました。受付開始から7時間で約130万件の予約が入ったとされ、折りたたみスタイルが市場で大きく伸びるのではないかと言われています。
こうした多面的な技術開発競争に1社ですべてをこなすアップルは対応できるのでしょうか。その行方に関心を寄せているのは、根っからのiPhoneユーザーだけではありません。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。