だんだん遠くなる「普通の幸せ」

河田:ただ、それよりも「結婚して家庭を持って、貯金も残す」ことが前世代よりも遥かに難しくなっている事実を直視するべきだと思います。

 過去2年で大企業を中心に賃上げが続いていますが、一方で物価上昇も著しい。社会保険料の国民負担率も年々上がっています。また、大企業で働いていても、管理職に就任すると残業代がつかない「働かせ放題」状態になり、報酬はアップしても、時間的な余裕はなくなり、ストレスは溜まる一方。

独り身ならFIREが身近に?(写真:DavideAngelini/Shutterstock.com)

 都内で働くとすれば、住居費も高額です。不動産購入価格は過去30年で値上がりを続けていて、都心では富裕層しか購入できませんし、郊外でもかなりの金額で住宅ローンを組む必要があります。

 所帯を持って、返済すべき住宅ローンという名の借金を抱え、辞められないから会社や役所の奴隷になるよりは、生涯独身を選び、単身世帯で通す──。こういう生き方をする人間は、国家から見ると困った存在かもしれませんが、個人の人生の幸せを考えた時、合理的な部分もあると思います。

──FIRE的な志向を持つ人は、今、マイノリティでもなんでもないという直感はありますね。