「パンゲア大陸」は幻、大陸移動説には誤りがある

 プレート説が生まれる以前、気候学者のアルフレッド・ウェゲナーが1922年に大陸移動説を唱えたのは有名な話です。

 ウェゲナーは、氷河の地形や化石の分布などから「南アメリカとアフリカ、南極は、もともと一つの大きな大陸だったが、それが分裂して移動した」という仮説を提唱しました。

 約3億年前に「パンゲア」と言われる超大陸が存在し、2億年前くらいから分裂、漂流することで、現在の大陸が形成されたという主張です。

 しかし、「大陸は上下運動しかしない」と考えていた当時の地球物理学者は「大陸を水平方向に移動させる原動力を説明できない」としてウェゲナーの仮説を否定しました。

南海トラフM9地震は起きない』(角田文雄・藤和彦著、方丈社)
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 ウェゲナーがグリーンランドで遭難死したことにより、大陸移動説は科学の表舞台からいったん消えました。

 ところがそれから30年以上経ったのち、「海洋底が拡大している」ことが大陸が水平に動いていることの証拠だとされ、大陸移動説はプレート説とともに劇的な復活を遂げました。

 海洋底拡大説は、海洋底の年齢の測定によって実証されたことになっています。

 1968年から始まった米国の深海底掘削計画で海底をつくる岩石の放射年代測定が行われた結果、「海洋底の岩石の年齢は、海嶺ではできたばかりで新しく、海嶺から遠ざかるにつれて古くなっている」との主張が生まれました。

 海洋底の岩石は、海溝に沈み込む直前の一番古い岩石でも2億年ほどであり、地球の年齢46億年に比べてはるかに若いとされてきました。

 プレート説によれば、中央海嶺をつくる岩石は、地球内部から生まれたばかりのマグマ起源のものであるので、海底には2億年以上前の古い時代の岩石があるはずがないと言われていますが、その後の調査で5億年以上前の岩石が海底で見つかっています。

 この事実に対し、「海溝に沈んだプレートは、地球の内部を巡って再び海嶺に戻ってきた」などと説明しています。しかし高温の下部マントルを通ってきた岩石が、再びもとのままの時代の姿を示すとは常識的に考えられません。

 ちなみに、ウェゲナーの大陸移動説には根本的な誤りがあります。

 現在の陸地の形だけを見て、パズルのように組み合うかどうかだけで大陸移動説を説明しようとしていますが、2~3億年前の陸の形は現在の陸の形とまったく違うことがわかってきました。

 現在の大陸を組み合わせて成り立つとされるパンゲア大陸は、大陸の形が保存されていることが確認できない限り、「幻の大陸」でしかないのです。